見立ての実験。
 

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「キャンドルホルダー、ありませんか?」

こんなお問い合わせをよくいただきます。

テーパーキャンドルを灯すためのキャンドルホルダー、

シルバーやガラス、ピューター製をはじめ、
専用のそれももちろんご用意しているのですが

いちばん気軽にお楽しみいただく方法を
ご提案しています。

お好きなグラスにキャンドルを入れて
塩で固定するだけ。

白い塩がまるで雪のようで
なかなか雰囲気がよいのです。

たとえば
真紅のカットが美しい
イギリスのアンティークグラスを見立てて。

普段は出番の少ないアイテムも
少し目線を変えるだけで
活躍の場がぐっと広がります。

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語るもの→ もの語り、物語→ その架け橋。
 

写真 2.JPG


とある春の日。


今にも泣き出しそうな空のもと、
行き場をなくした彼女は
此処へやってきたのでした。


「まるでカフェみたい」
スタッフやお客さまにそう言われて
(というかカフェなんです、ウチ…)、


最初は所在なさげだった彼女が
だんだん誇らしげに見えてきて、
いつのまにかKicaカフェの中で
無くては困る存在になっていく様を
親のような気持ちで見ていました。


みんなが大好きだった
大きなパインのカウンター、


本日、晴れてお嫁入り。


新しい居場所で彼女は
アイランドキッチンの流し台として
生まれ変わります。


新しい持ち主に自信を持ってお勧めできるのは、
実際にまいにち使って
彼女の素晴らしさを身をもって知ったから。


「売り物を使いながら売るなんて」と
驚く方もいらっしゃいますが、
椅子やテーブル、チェストなどKicaに並んだ商品の多くを
大切に使わせていただきながら私たちは販売しています。


使い込まれることで魅力を失ってしまうのではなく
使い込まれてこそ味わいや愛着が増すものを。


人から人へ、
場から場へ、
時に海をわたり
時代も飛び超えて。


時を刻んだものと誰かをつなぐ
架け橋みたいな場でありたいと、
トラックに積まれた彼女を見送りながら
改めてそう思うのでした。



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この商品が、ワタシです。
 

BEZ3kUbCEAIpaVQ.jpg


私の仕事はモノを売ることでもあるのだけれど、
お店にはモノ以外のものがたくさんあると信じています。

モノ以外の何かを求めて来てくださる方々を思い浮かべながら、
製品を選び、それを商品として並べます。


以下は、もっとも尊敬するコピーライターの言葉。
胸はって「そうだ!」と言えるまではまだ時間がかかりそうだし、
もしかしたら自分には決定的に欠落している部分なのかもしれません。

だから、明日(今日)もお店を開けるのだろうと思います。

:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

 製品と商品のちがいはなんだ。それはどこにあるのかという問題。
 製品とは、「工場で生産されたままの、モノの状態である」という。
これ、ごくふつうにおもいうかぶイメージだが、では商品とはなんだ。商品とは、その製品のもつ機能があたえてくれる利便である。
 利便には、身体や環境にたいし物理的効果をもらたすモノの部分と、こころ(気分)に作用するコトの部分とがある。「レンズが光を屈折させる機能」をもつ メガネという製品によって、「よく見えるようになる」というのも、「かけると知的に見られる」というのも、ともにメガネの利便である。前者が物理的機能と しての商品価値で、後者が気分に作用する商品価値である。もちろん、「よく見える」ことによって「いい気分になる」わけだから、身体への作用がこころへの 作用に転化して価値化するわけで、こころとからだは不可分だといえる。しかし、身体への作用はなくて、いきなり脳に作用してこころが動くこともある。故郷 の駅に降り立った瞬間に、胸がキュンとしたなんてのや、ブランドもののドレスを着ると、たとえそれが着心地の悪いものであっても、どうだという気持ちにな るのも、いきなりこころへくる価値である。
(中略)
骨董はどうだ。酒器や花器や茶碗は機能を持つが、その物理的機能だけに対して、あのプライスは打倒ではない。ただ酒を飲むためだけの器なら、百円均一でもみつかるだろう。やはり、結果的に、モノよりコトを買っているのだ。

(仲畑貴志「この骨董が、アナタです。 〜イメージの消費〜より抜粋」)

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お心入れ
 

IMG_2097.JPG
ドクターズバッグ/japan 12,600yen


「お心入れ(おこころいれ)」という言葉をご存知なら、
相当のアンティーク通か雑貨業に精通した方だとお見受けします。


かつて華美で重厚な印象しかなかった日本のアンティーク業界に
「カントリーアンティーク」という全く新しいジャンルを提唱し、
一大旋風を巻き起こした「カントリーモール・デポー39」、
そのショッププロデューサー、天沼寿子さんの言葉です。


長く売れずに残っている家具や雑貨に
磨きをかけワックスを擦り込み、心を込めてケアをする。

心を、入れる。

すると今まで見向きもされたなかった彼らが、
ほどなくして大事にしてくださる方のもとへと旅立っていく、

そんな不思議な出来事がたびたび起こる。

だからこの「お心入れ」は、
雑貨屋にとって
もっとも大事な作業なのだと。



この仕事をはじめて、
なんどそれを実感したことでしょう。

その不思議な出来事は、私の店でも
ほぼ日常的に繰り返されています。


徹底的なメンテナンスまでいかずとも、
朝、何気なく1センチだけ動かしたもの、
写真を撮ったもの、
なんとなく目が合ったものたちが、
その日のうちに旅立って行くのです。
それはそれは目を見張るほど高い確率で。


だから
できるだけ
品に触れてあげてくださいと
私はスタッフにお願いしています。



かつて
誰かの元で愛されてきたものが
また誰かの元へ受け継がれていくまでの
中継地である私たちに唯一できること。
お心入れ。

今日も、
あしたも
あさっても
つづいていく
しあわせな作業です。


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三面鏡/france 12,600yen




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打ち上げ花火の夜 〜愛と涙とご馳走と〜

昨夜は「キカのフリーマーケットvol.04」の打ち上げパーティー。
3日間、日替わりで登場してくださった店主さんや
イベントにご協力くださった方々が一堂に集い、
それはそれは賑やかで楽しい晩餐会になりました。





ポットラック(持ち寄り)形式の気軽なパーティーだったのだけど、
さすが参加者の大半がクリエイティブな女性とあって
出るわ出るわ、ご馳走の数々。




自然薯とエビの天ぷら、スパイスが効いた「これぞ!」のクスクス、
プチトマトを器にしたアボカドサラダ、絶品ラタトュイユ、
手羽先の甘酢煮、冷しゃぶサラダ、手づくりの旗が立てられたポテトフライ、
ふわふわキッシュ、あつあつピッツア、夜店のフランクフルト、
おおぶり餃子、コロ助コロッケ、ぷりぷり超長ウィンナー、
豆腐と豚の甘酢あんかけ、イタリアンサラダ、ポテ玉サラダ、
具沢山おにぎり、クリームチーズパイ、有名ブラッスリーの総菜パン、
サクサクパイスティック、オレンジとヨーグルトのミルクプリン、
極上ガトゥショコラ、贅沢ロールケーキ、さくさくクッキー…
(う〜ん。料理名はもっとお洒落なはずだし、もっと色々あったけど、
ワイン片手のホロ酔い店主、食べるのに夢中で写真も撮り忘れ…。とほほ)。

見たこともないような趣向をこらした華やかな料理が
テーブルに乗り切らないほど登場し、
そのどれもが目がクギつけになるほど華やかで。
まるで息つく間もなく打ち上げられる花火のよう。

布小物からアクセサリー、ドレスにスウィーツ、お花に写真、
ドッググッズにアンティーク…。
世代も業種も環境も国籍も実にさまざま。
各分野で活躍する作家さんや店主さん、
小さな空間にものすごいパワーと笑いが集結した夢のような晩餐会。





宴は素敵なシャンソンで幕を閉じました。
澄んだ歌声を披露してくださったASさんは
人生はもちろん、ショップ経営者としても大先輩。
フリマが終了してからも何度か遊びにきてくださり、
店主が憧れの念を強く抱くようになった素敵な女性。
夢とこだわり、陽気な笑いを忘れることなく
年齢を重ねるごとにその魅力を増していく、
そんな心から尊敬する方から今日、こんなメールが届きました。

***

「昨日は、どうも有難うございました。
若い人たちに囲まれ、楽しい時間を過ごせました。
ヤングミセスのパワーやセンス、とても感動的でした。
私たちも、負けないように何時までも頑張ります。
貴女も、主(あるじ)として悩みは尽きないと思いますが、
初心忘るべからず、お店を出した時のことを常に思い出して下さい。
昨日も言ったけど、貴女の人柄が皆を引っ張っているのよ。
たとえ自覚がないとしても。
でも、夢を追い続ける生き方は
時として誰かを傷つけることもある。
自分を振り返りながら、反省もしながら、
ずっと前を向いて進んでください。
ご主人を大切にね。感謝の気持ちを忘れないようにね。また遊びに行きます」

***

立ち止まる勇気も
振り返る余裕もないまま
ただがむしゃらに走りつづけた8年間。
未熟すぎる自分や店にほとほと嫌気がさしつつも、
だからこそ
夢や希望や欲望は、尽きることなく溢れ出た。

時に何を求めているのかすら
わからなくなることもあるけれど、
でも。

ASさんをはじめ、
宝物みたいな出逢いが
ここには数えきれないほどあって、
そのたびに自分は幸せ者だと
改めて実感している。

不十分な自分を支え続けてくれる家族や友人、スタッフに。
そして、日々生まれる素晴らしい出逢いに。

心からありがとう。

ASさんの言葉を噛み締めながら、
いま一度、いや何度でも、感謝の言葉を贈りつづけたい。

出逢えた奇跡に感謝しながら
願わくば、もっと優しくもっと穏やかに。
これからも顔を上げて進んでいこう。

テーブルに咲いたおいしい花火を思い出しながら、
そう心に誓う夏の夜。



お忙しいなかおいしいご馳走とともに
ご参加くださった皆さま、
楽しい時間を
本当にありがとうございました!


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海と空と雲と鳩について。


天気がいいというだけで
最高にしあわせなオフの今日。
ふと思いたって近所の海へ。

どこまでも穏やかな
空や水面は

瞬きをするたびに
透明に近い蒼や紫、金、緑、白へ
その色を変化させていた。






「来年はなにをやる?」

ふいに訊かれて返事に詰まった
昨夜のことを思い出す。


来年ハナニヲヤル?

そういえば最近は
来年のことも
これからのことも
深く考えるような日々を送ってはいなかった。


大切な人たちと
僅かでも長く一緒に過ごしたい。

その一心で
時間よ止まれなどと思いこそすれ
これからの自分については
考えるアタマをもってなかったかもしれない。


やるべきことはたくさんある。
でも やりたいことは
どうだろう。


とどまることなく
光る海を
とどまることなく
流れる雲を
ただぼんやりと眺めながら
ずっととまったままだった
自分について考えた。


たくさんの鳩たちが
日向ぼっこや毛繕いをしながら、
のんびりと暮らす海だった。


さて。

アナタハ来年ナニヲヤリタイデスカ?


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time machine

たとえば

2階の古い勉強机が
ものがたりの入口で。

一番上の引き出しに
そろりそろりと
足をのっけて
一気に体を滑り込ませたら。





見逃すべきでなかった過去のサインに
気づくことができただろうか。

消えてなくなろうとしているものを
取り戻すことができるだろうか。


そして。


大切にすべきものを
間違えたり迷ったりせず
この目でみつけ
この手でつかみとることも。





絶望や失望を
希望に変える
魔法のどうぐ。

他の何を引き換えにしてもいい。
いま、私がいちばん欲しいもの。







日々Kicaにやってくる

フランスやイギリスの

古道具や家具たちが

私にとって

そして

あなたや 他の誰かにとって

ちょっとした夢の入口になる日のことを

いつもより とくに 強く

心から願います。


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ラヴレター vol.3


リネンバッグ


その人が選ぶもの、
持っているもの、
つくるもの、
暮らし方、
それらを垣間みるたびに
背筋がピンと伸びるような
清々しい気持ちになる。

好きな世界がたぶん似ていて、
自分なりのスタイルをしっかり持ってて。
だから、くだけた話をしていても
安心できるし信頼している。

辛い時にすっと現れ、
いつも魔法のように嬉しい言葉をかけてくれる、
大好きで、大切で、かけがえのない人、
それが作家のHaruko Ishidaさん。

そんな彼女が、私のためにバッグを作ってくださいました。

ザラッとした手ざわりが心地いい
丈夫な厚手の生地は、
100年前のハンガリーリネン。

手作業で紡がれたあと
ずっと倉庫で眠っていたものなのだとか。

チャコールグレイのラインに合わせて
内布に選んでくださったのは、
青い花柄のリバティ生地。

細部までに効かせたこだわりは、さすがのひとことです。

さらに、荷物の多い私のためにマチもたっぷり、
持ち手と本体の接続部分には何度も補強を施して機能性も完璧に。

なによりも。
感動のあまり声をあげてしまったのは
手刺繍のイニシャル。

流れるような筆記書体、さわやかな水色、
ひと針ひと針ていねいに施されたステッチは
何度眺めても溜息が出るほどのかわいらしさ。


イニシャル


一体どれだけの時間をかけてつくってくださったんだろう…。
それを思うと
チカラが湧いて心が穏やかになる、
お守りみたいな気がします。


Harukoさん、本当にありがとうございました。

世界でただひとつのバッグ、
ずっと欲しかった念願のバッグ、
もう手に入らない最後の布でつくってくれた特別なバッグ。

ずっとずっと
大切に使わせていただきます。

*Haruko Ishidaさんのソーイングレッスン
「アンティークとハンドメイドのある暮らし/Le idee de h」は
毎月第一木曜日、Kicaカフェで好評開催中です。詳しくはこちら>>







フランスから白いデスクが届きました。
アトリエや勉強机におすすめの小ぶりなサイズ、
引き出しには仕切りがついて
こまごまとしたものを整然と収納できます。
一人でひょいっと持ち上げられる軽さもポイント。
ぜひチェックしにきてくださいね。

引き出し



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もうひとつの出発点

入り口/大


この7年、
ほぼ休みなく開けていた店は
そうとう疲れていたと思う。

つい先日、
思いきって臨時休業をいただき
店の補修と模様替えを行うことにした。


スタッフ友人総動員で
朝いちばんから作業をスタート。

まずは全ての家具を移動して、
傷みの激しい床、そしてドアや窓枠の補修と塗装。
棚の取り付け、入荷したばかりの家具の配置、
新しいコーナーづくりと新商品のディスプレイ。

書いてしまえばわずか4行なのだけど
いやいや、これが本気で大変。

てきぱき、もくもく…。
猛烈な勢いで、手際よく。
励ましあって、讃えあって、
がっつりたっぷり11時間。

皆フラフラになりながら
ようやく全ての作業が完了。

一斉に外へ出て、
しげしげと店を眺める。

「よくなった! 見違えた! 頑張った!」
思わず歓声、自然に拍手が沸き起こった。


店も
私も
オープンした頃の輝きを
もう一度、取り戻せたような気がした。


皆のチカラで Kicaはできてる。

何千人の人が通り過ぎたであろう
傷だらけの床を磨きながら
何度も何度もそう思った。

私一人じゃ何もできない。

これまでも これからも。
ずっと支えてくれる人たちへ
感謝の気持ちを忘れてはいけないと思う。


願わくば数年後、
傷だらけになった床を
また磨くことができたなら
なにより幸せだと思う。


中心になって作業を進めてくれたスタッフの砂ちゃん、
魔法みたいな大工技を披露してくれたSさん、
丁寧に美しく…完璧な仕事ぶりを発揮してくれたAちゃん、
休日を返上して駆けつけてくれた元スタッフのMiku、
多忙な中、プロの技を見せてくれたTちゃん、
遠方から差し入れをもって訪ねてくれたスタッフのRie、
心配して仕事帰りに覗いてくれたパートナー、

本当に本当にありがとう、そしてお疲れさまでした!




ノブ

ドアの木板は、ちょっと渋めの色に変身。
何千人もの方に回してもらった片方の真鍮ノブは
鈍い輝きを増していきます。


床1

砂漠状態だった床やドアの木は、
おもしろいほど塗料を吸い込み、
ほら、こんなに元気になりました。


床2

雑貨スペースの床はややダークな色に変更。
ちょっぴり重厚感が増したみたいで大満足。


リス

名付けて「今の気分」コーナー。お勧めアイテムが並びます。


正面ディスプレイ

ちょっぴり秋色をプラス。ピアノは店主のお気に入り。


チェスト

一番のお気に入り、ファブリックコーナー。
ライティングビューローと一体化した珍しいチェストは
店主のイチオシアイテムです(189,000yen)。


ミシンコーナー
糸
ミシン2

クラフトコーナーもさらに充実、ボタンやレースもさらに見やすくなりました。


鳩

癒しのコーナー。香るお花と鳥さんたちがお出迎え。


クローゼット
クローゼット

今回の模様替えの最大目的、新たにつくったクローゼットコーナー。
深まる秋とともにさらに充実していきますので、どうぞご期待ください。


キーボックス
カフェ

カフェスペースは、大きなキーボックスが新しい顔に。


入り口/ワイド

扉の向こう側に 新しいハッピーが待っています☆

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ラヴレター vol.2

jam

すこ〜し むかし あるところに
小さなお店がありました。

店内には
女店主がひとり
そして異国から集められた
古い道具や雑貨たちが
並んでおりました。

ある日 その小さな店に
ひとりのおばあさんが やってきました。

おばあさんは 静かに ゆっくり
店内を見てまわると
やがて その店でいちばん高価なマグを ふたつ 両手にとって  
レジへとやってきました。

店主は平静を装いながらも
内心どきどきしています。
なぜかって?

そのマグに貼られた値札を
おばあさんは見ていないように
店主には思えたからでした。

「え、そんなに高いの!? …ケタを間違えてたわ」。
意気揚々と値段を告げる店主に
返される驚きと失望に満ちた言葉。
過去に何度かそんなやりとりが
別のお客さまとの間に
あったからでした。

たしかに「高い」。
でも「欲しい」。そう思えるものだけを
店に置こうと店主は心に決めています。

でも。
レジを打つ手が震えることがあるのも事実。

すると どうでしょう。

店主の不安を打ち消すように
おばあさんは こう言いました。

「ずっと探していました。出会えてよかった」。

それがこのマグのことなのか
この店のことなのか
店主には今もわかりません。
でも どちらにせよ
店主にとっては
なにより嬉しい言葉でした。


おばあさんは 満足気に品を受け取ると
帰り際にこう言いました。
「もう一度 同じものを探してくれますか?
今度は贈り物にしたいから」。

店主が 名前と連絡先を聞こうとすると
おばあさんは にっこり笑って
「また来るから」
そう言い残して店を後にしたのです。 

店主は俄然はりきって、
すぐに同じ商品を見つけると
毎日おばあさんを待っていました。

ほどなくして おばあさんは再び
やってきました。
そして約束の品を受け取ると
本当に少しずつではありますが、
自分の話を店主に語ってくれるようになったのです。

おばあさんはとても不思議な方でした。

眼鏡の奥から見える目は
とてもやさしく 懐かしく 
店主は いつも  
まるで母親と話しているような
あたたかくて居心地のいい気持ちになるのでした。
反面、信じられないほど博識で、
適当にごまかしたり知ったかぶりをすると
すぐにばれてボロが出ることに店主は気づいておりました。

店主は だから、
知らないことは「知らない」と率直に伝え、
おばあさんは
「知らない」ことだらけの店主に
実にいろんなことを教えてくれました。


以前アメリカに住んでいたというおばあさん、
だからなのか、彼女が求める品は アメリカのものばかりでした。


「ウチはどちらかというとヨーロッパのものが多いのです。
お客さまの探している品なら 近くにもっと揃う店がありますよ」。

ある日 店主は 思いきっておばあさんにこう告げました。
おばあさんが大好きで
お会いするたびに心が躍り、
まるで母のように慕っていた店主にとって
それを告げることは 本当に断腸の想いでした。
でも。だからこそ よけいに。
おばあさんのコレクションのお手伝いができるのは
自分の店ではないのかも…と思うようになっていたのです。

するとおばあさんは にっこり笑ってこう言いました。
「ここで買いたいのよ」。


ある日 おばあさんは ご自身が育てた「桑の実」のジャムを
店主にプレゼントしてくださいました。

美しくラッピングされた瓶には
果樹の写真や
生産者(もちろんおばあさんです)の名前、
生産方法などを記した本格的なラベルが貼られていました。

木いちごとブルーベリーを足して2で割ったような
愛らしい形と ほどよく酸味が効いた上品な甘さ。
それはそれは贅沢でおいしいジャムでした。
いたく感動した店主はさっそくお店のパティシエに頼んで
そのジャムを使ったケーキをつくってもらいました。

小さなカップケーキが焼きあがった頃
偶然おばあさんが来られました。
絶妙なタイミングに 店主は思わず小躍りします。

焼きたてのケーキを差しあげると
おばあさんは 顔をくしゃくしゃにして喜んでくださいました。
女店主もおばあさん以上に幸せな気持ちになっていました。

cake

ワケもなく なぜか心が惹かれたり、
思わずラヴレターをしたためたくなる、
そんな素敵な方との出会いが、この小さな店にはたくさんあります。

今日も静かな街の小さな店で
女店主は待っています。
いつか あなたと会える日を。

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