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幸福な仕事。
 

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古いものの買取り依頼を
ときどき、いただきます。

今日は、以前からお声をいただきながら
なかなか叶わなかったお宅を訪ねました。

庭の花に水をやりながら
出迎えてくださったのは、
二人のおばあちゃん姉妹。

この仕事を始めて間もない未熟者なのですが、
自分が求める品があるかないか
朧げながらわかるようになって、
正直言うと今日は「ない」と直感しました。

おばあちゃんたちのお母さんの
古い普段着の着物やハギレ、進物の食器達。

それでも姉おばあちゃんは思い入れがあるようで、
妹おばあちゃんが私のために広げてくれたものを
次から次へと再び箪笥にしまってしまうのでした。

「何してるの? 残したところで
私たちにはどうすることもできないでしょ。
処分するにもお金がかかるのよ。
もう何年も持て余してきたじゃないの」
妹おばあちゃんは驚いた様子で
姉おばあちゃんを諭します。

こんなシーンは決して珍しいことではありません。

思い出が詰まった古いものたちを
見ず知らずのニンゲンが連れ帰る、
そんな状況を目の当たりにしたら
これは寧ろ当然の行動と言えます。

姉おばあちゃんの気持ちも
妹おばあちゃんの気持ちも
痛いほどわかるから、私は
席を外して待つことにしました。

厳しいようですが品物を拝見し、
自分が求めるものがないとわかれば
持ち帰るものは少ないに越したことはない。
妹おばあちゃんが姉おばあちゃんに言ったように、
古物商であろうが引き取り手のないものを処分するには
お金がかかる。これはまぎれもない事実なのです。

ちょうど妹おばあちゃんの娘さんも登場し、
みじかい家族会議の後に、けっきょく私は
ほぼ全ての品を引き取ることになりました。

恐る恐る姉おばあちゃんへ目を向けると
ちょっぴり寂しそうに、だけど
にっこり微笑んでくれました。

なんだかいたたまれない気持ちになって
赤字覚悟で出せるだけのお金を渡そうとした私に
妹おばあちゃんが言いました。

「要りません。来てくださっただけで感謝しているの。
古いものの引取りなんて電話一本で誰にでも頼めるし、
処分にお金がかかることも私たちは知ってるのですよ。
それでも万が一でも必要としてくれる人の手に渡れば、
亡くなった母も喜ぶ。生前ずっとそう言ってたからね。
だから私たちは貴方を選んだ、例え時間がかかっても。
誰でもよかった訳じゃない、貴方だからお願いしたの」

玄関先で見送ってくれた妹おばあちゃんとその娘さん。
「空いたスペースにはまた新しいなにかが入ります。
ずっとその時を待っていたんです。ほんとうにありがとう」

文旦とお漬け物がいっぱい入った紙袋を「お土産」と
差し出しながら笑顔でそう告げられて、
思わず涙が出そうになって、
逃げるように夕焼けに向かってクルマを走らせながら
私は自分のシゴトについて考えていました。

ぜったい、向いてない。
ぜったい、向いてない。

古物買取や引取りの後は、
いつも決まって考えます。

長い年月をかけて古物が纏う
様々な人々の様々なおもいを
軽々と引き取って
飄々と引きわたす、
いつかできるようになるのか。

また無駄足と笑われるな。
こんなことでいいのかな。

ものを扱う商いをする以上、
売れるのか、売れないかは
きっと一番だいじな事柄で
頭ではわかっちゃいるけど。

きょうも、多分これからも
向いてない仕事の中に運良く生じる
無数の物語を求めていくんだろうな。

そんな、こんなな定休日。
文旦の香りを吸込みます。

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