<< Kica喫茶部のいま/ただいまのキッシュ | main | Promenade de Galette des Roi >>
1973年のピンボール的集合体 ー失われつつあるものと生まれつつあるものー。








関西でヴィンテージウェアを扱う老舗ショップなら
知らない人はいないと思う、とある企業の代表から
突然連絡をいただいて、西の彼方へと車を走らせた。


IMG_1565.jpg


Kicaの姉妹店、ロブジェ キ ペピを作る前から、
いや、閉店してからもずっと。変わることなく
静かに私の活動を見守り続けてくれている人だ。



IMG_1567.jpg



目的地の大きな建物に踏み入れるとそこには
ヴィンテージの洋服が床から天井まで大量に
積み上げられて、壮大なる山々を築いていた。


何度も訪れた場所だったけど毎回やはり息を呑む。


山は以前より確実に巨大化し、
向かいの壁に辿り着くことは
このさき永遠にないように思えた。



IMG_1586.jpg


そんな私の様子に目をくれることもなく、いくつかの山を指差しながら
 「貴方のために用意したのはここからここまで。後は好きに選びなさい」
穏やかな声でそう告げるとその人は、再び忙しない足取りで消えていった。




IMG_1584.jpg


無数の、青白い蛍光灯に照らされた広い広い倉庫の片隅。

ふと「1973年のピンボール」(村上春樹著)に描かれた
あるシーンを思い出していた。

元養鶏場の冷凍倉庫に置かれた78台の古いピンボールマシン、
静かに眠り続けるそれらが主人公の手によって一斉に動き出す。

文字だけで描かれた世界、だけどその様子はまるで
映像を見たかのように鮮やかに脳裏に刻まれている。

「1973年のピンボール」は、極論すると
「何かを失う過程」を仔細に描いた物語で、
そのハイライトシーンを思い出したのは
ごく自然なことだったのだといまは思う。


一旦は生を失った物品に再びそれを与えること、
その決定権を常に自分が握っているということ、
と同時に、いま失ってはいけない何かについて。

さまざまな思いを巡らせながら黙々と、
大量の服の山をかき分けつづけた。
 


IMG_1574.jpg


しばらくするとどこからともなくその人は現れ、
私が選んだ品を外に運び出しながらこう言った。


「あとは貴方が付けたい値段を付けて売りなさい」


父と同じくらい、いやもうほんの少しだけ若いその人は、
神戸や大阪で一世を風靡した古着文化を築いた第一人者だ。

洋服に付けられたハンガーを手際よく外しながら彼は続けた。
「僕はそろそろ此処の仕事を引退することになると思う」。


来るべき時が来ていると思った瞬間だった。




IMG_1572.jpg


十代二十代、週末ごとに出向いた神戸高架下で
数え切れないほどの刺激を受けた私にとっては
それらが次々と姿を消していく現状が切なくて、
だからロブジェ キ ペピを始めた理由の一つは
「古き良き服屋復活」でもあったのだけれど。

かつて、沢山の職人が手技を競って生み出した品々は
時間の経過とともに実用品では既になくなりつつあり、
物好きのための美術品の域に移行しようとしている。




IMG_1580.jpg


「ヴィンテージの取り扱いをやめるのですか?」
恐る恐る聞いてみた。


「いや、正直わからない。ただ、いま在るものは一旦手放す。
そのあと、これらに代わる何かをこれからも探しつづけるよ。
時間とともにまた新しいヴィンテージは生まれつづけると僕は思うから」


その人はそう言って、にっこりと微笑んだ。




IMG_1578.jpg


変わるべきもの、変わるべきこと、変わるべき自分。
変わらないもの、変わらないこと、変わらない自分。

それらについて徒然なる思いを巡らせながら、
1ミリの隙間もつくらぬよう車に詰めこんだ
洋服たちを検品し、手を入れ、値段を付けた。

その人が洋服に付けられたタグをみたら
呆れて苦笑いすると思う、そんな値段だ。


もともと古さゆえの希少性をウリにする気は毛頭ない。
古いから劣化もするし、愛用されていたものほど傷みもある。
あくまで「実用できる中古品」を前提として私はこれらと接し扱う。

ただ、時代時代の職人の手仕事や
時を経たからこそそれらが纏うことになった新たな魅力、
さらに何らかの物語を僅かでも感じ取っていただけたら
とても幸せに思う。




IMG_1570.jpg


前置きが非常に長くなりましたが、そんな嬉しい経緯を経て
10/15(木)からスタートする「ロブジェ リヴァイヴァル」、

今回は件のおばあちゃん姉妹から届いた秋冬物の他に、
ヨーロッパのヴィンテージの洋服もたくさん並びます。



IMG_1576.jpg


ロブジェ キ ペピで販売していたボリュームをはるかに超える
凄い量の洋服や小物たち、一度にご紹介するのは難しいので
日々入れ替えながらの展開となります。

期間中、何度も足を運んでいただければ
きっと新たな宝物に出会えるはず。



IMG_1567.jpg



そうそう、今回はメンズアイテムも登場します。
オーソドックスなシャツやジャケットはもちろん、
美川憲一や美輪明宏を彷彿させるグリッターなもの、
ホテルのドアマンのジャケットなど
ハロウィンに使えそうなユニークなアイテムも。

どうぞお楽しみに。


【 ロブジェ リ ヴァイヴァル vol.03 】
Revival of L’objet qui Pepie
2015.10.15(thu)〜10.27(tue)
10:30〜19:00

※ 10.21(水)も通常営業いたします。
※ 期間中、カフェは席数を制限して営業いたします。17(土)のみカフェ営業はお休みいただきます。
※ 営業時間は変動する場合があります。
詳細は随時Facebook、またはtwitterにてお知らせいたします。

Kica Facebookpage →
https://www.facebook.com/Kica.co.jp/timeline
Kica twitter →
https://twitter.com/kica_


JUGEMテーマ:ビンテージ 古着
| Posted by kica2001 | event | comments(0) | trackbacks(0) |













url: http://blog.kica.co.jp/trackback/1007000



calendar
S M T W T F S
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30      
<< April 2017 >>


Recent Entry
   
follow me
   
archives
   
category
   
recent comment
search this site.