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黒いサンタクロース
プレゼント

プレゼントで遊ぶレヲ

毎年、クリスマスが近づくとその人はやってくる。
プレゼントを詰めた赤い袋を抱えて。

袋の中身は、見なくてもわかる。
外国製の猫じゃらし。そして
私たちが普段は買わない高価なキャットフードだ。

5年前,水たまりで溺れていた仔猫を保護したのがその人、
Tさんだった。
同じ頃 私たち夫婦は 飼い始めた仔猫と別れて失意の淵にいた。
あるカフェに貼られていた里親募集の毛糸玉のような写真を見て
迷わず「ください!」と名乗りをあげたのは 
きっと運命だったんだろう。

毛糸玉と はじめて遭遇した時の衝撃は忘れられない。

ぎょろりと光る大きな両眼は情けないほど左右に離れ
その鼻筋は大地に向かって果てしなく間延びし
小さな体の毛を精一杯逆立ててひらりひらりと動くその姿は
子供の頃に図鑑で見た黒ヒョウそのものだった。

友達は一様に
その不細工な姿を見て お腹を抱えて笑った。


抱こうとすると力一杯噛みつく。
里親募集の愛らしい写真とはほど遠い野生動物がそこにいた。

私たちの動揺を察したのか Tさんは笑いながらこう言った。

「ネコはね 愛をいっぱい注いであげると
どんどんかわいい顔に変わっていくのよ」。

Tさんは 長年持病を煩っており 
いまは一人で暮らしていること、
ゆえに動物と暮らすことに躊躇していること、
飼い手のない動物達の避妊手術や保護活動を
行っていることなどを静かに語ってくださった。

さまざまな愛に満ちた素敵な大人の女性だった。

私たちはその黒ヒョウを「レヲ」と名づけ
一緒に暮らすことを決めた。

同居してから3日間は 寝不足と痛みとの戦いだった。
布団からはみ出た私たちの手足に
黒ヒョウは容赦なくとびかかってきては全力で噛みついた。

数ヶ月がたったころ
TさんがKicaを訪ねてきてくださった。
両手にいっぱいレヲへのプレゼントを抱えて。
ちょうど街にクリスマスソングが流れ始めた頃だった。

私は体中の傷をTさんに見せながら
レヲのやんちゃぶりを無我夢中で話した。

Tさんを責めるつもりは全くなかったのだけど
彼女は責任を感じたのか あるいは
レヲの暮らしを不憫に思ったのかもしれない。

それからクリスマスが近くなると彼女は必ず
たくさんのプレゼントを抱えて私を訪ねてきてくれた。

あれから6回目のクリスマスを私たち家族は迎える。
不細工で野蛮だった黒ヒョウは
すっかり美形の大人のネコへと成長した。

噛む → 叱られる。
これを何万回も繰り返してきて大きくなったレヲは
いつしか まるで犬のように私たちの手足を舐めるようになった。
逃がさないように前足で押さえつけ
時々こちらの顔色を伺いながら親ネコのような顔で舐めてくれる。

舐める → ほめられる。
野良だった彼が
人間と仲良く共存していくために唯一覚えた知恵なのだろうか。

いつも窓辺にたたずんで
外の世界を眺めている。
そんな彼を見ていると
自由に野山を駆けまわっていた時代を 恋しく思っているのかと
心が少し苦しくなる。

キミはいま 幸せなのだろうか。


ともあれ
メリークリスマス。
今年もサンタがやってきたよ。
私たちがキミに与えることができないくらい
大きな愛を両手に抱えて。

キミの笑顔を見たいと思って
あの手この手を使ってみるけど
そんな私が
決まってキミから笑顔をもらう。

たぶん いや
まぎれもなく
キミが私のサンタなんだな。


今年も いろいろ ありがとう。

新しい年も 素敵なできごとが 
キミにたくさん ふりつもりますように…。

Tさんが 元気な姿を私に見せてくれますように…。

そして我が家の壁が
これ以上ボロボロになりませんように…。

posted by Kica manager
| Posted by kica2001 | life | comments(2) | trackbacks(0) |




モアイ (2008/01/01 1:26 AM)
なんだかほのぼのとしたお話ですね。。
レヲちゃんにとっては本当にサンタクロースなんですね。
今の可愛くなったレヲちゃんも見てみたいものです。
なんだか切なくてあたたかくて、心あたたまりました!

Kica manager (2008/01/01 2:07 AM)
嬉しいコメント ありがとうございます。

彼はもう大人のネコなんですが、
今年のクリスマスプレゼントには意外なくらい喰いついて
一人でず〜っと一生懸命遊んでました。
「おばかさん」と呆れるんですが、やっぱりかわいい…
親バカ日記でした!ありがとございます。










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