
久しぶりに大阪へ行った。
展示会のためだ。
元来、引きこもり気味で
休日は意地でも外に出ない私にとって、
展示会は外界と触れあう貴重な機会でもある。
たまには外の世界を見るのも大切だと、
そう自分に言い聞かせながら
しぶしぶ出かけることにしている。
さて
地下鉄駅から歩いて数分。
連立する小さなビル群の一角、
ごみごみとした通りに佇むビルの入り口から、
なにげなく奥へ続く細長い廊下を覗き込む。
ビルの入り口に 立て看板がある。
どうやら、カフェがあるらしい。
「お茶飲んでから行こう」
そう思い、一歩足を踏み入れてびっくり。
細長い廊下の奥に別世界が広がっていたからだ。
イギリスやイタリアではよくあるカフェのつくりだけれども
日本の、かつオフィス街で
わずか10メートル足らず歩を進めただけで、
小汚いビルの向こう側にこんなにも癒しの世界が広がっているなんて
家に引きこもったままでは当然知る由もない、
すばらしい世界がそこにはあった。
VADE MECVM.
日常と非日常、表裏一体の境界線。
限りなく手短かなonとoffの在処。
キャッチコピーをふと考えてみたくなる、
青青と茂る公園の緑、
その借景にみごと成功したカフェだった。
壁も、床も、天井も、
一切の無駄を省いた無機質なコンクリート造り。
学校みたいな机や椅子たちは決して向かい合うこともなく
ただ静かに、目の前の公園の緑だけに向けられている。
その空間のすべては、公園にはじまり、公園に終わっていた。
絵もなく、花もなく、唄もなく。もちろん飾る言葉もない。
ただ、ギャルソンが真剣にコーヒーを煎れる姿と
その後ろに見える公園の緑だけを求めて
人はここを訪れるのだろうか。
冬には冬の。夏には夏の。梅雨には梅雨の。
四季折々の楽しみがここにはあって
きっと
お茶以外のなにものも、
ここには必要ないのだろう。
というか、それ以上のものは
たぶんここには存在しない。
この
与えられたロケーションを
最大に生かすとなると
これ以上の形はきっとないのだと思った。
「すごい」
「住みたい」
「かっこいい」
「つくった人に会ってみたい」
そう素直に思える数少ないカフェだった。
いつか
このような恵まれたロケーションを手に入れることがあったなら
私もこのように暮らしたい。
そのお手本のようなカフェだった。
今日は、いい日だ。
意を決して出てきてよかった。
展示会もすばらしかったけれど
この場所に出会えたことが
今日の成果のすべてだと。
そう思えたカフェであった。
今、何が悲しいかって一人でゆっくりコーヒーを飲んで過ごす時間が無いことなんです。
お気に入りのカフェってありそうで無いですよね・・・東京ではありますか?
私はスパイスカフェさんがお気に入りです。
http://www.spicecafe.info/home