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ラヴレター vol.2

jam

すこ〜し むかし あるところに
小さなお店がありました。

店内には
女店主がひとり
そして異国から集められた
古い道具や雑貨たちが
並んでおりました。

ある日 その小さな店に
ひとりのおばあさんが やってきました。

おばあさんは 静かに ゆっくり
店内を見てまわると
やがて その店でいちばん高価なマグを ふたつ 両手にとって  
レジへとやってきました。

店主は平静を装いながらも
内心どきどきしています。
なぜかって?

そのマグに貼られた値札を
おばあさんは見ていないように
店主には思えたからでした。

「え、そんなに高いの!? …ケタを間違えてたわ」。
意気揚々と値段を告げる店主に
返される驚きと失望に満ちた言葉。
過去に何度かそんなやりとりが
別のお客さまとの間に
あったからでした。

たしかに「高い」。
でも「欲しい」。そう思えるものだけを
店に置こうと店主は心に決めています。

でも。
レジを打つ手が震えることがあるのも事実。

すると どうでしょう。

店主の不安を打ち消すように
おばあさんは こう言いました。

「ずっと探していました。出会えてよかった」。

それがこのマグのことなのか
この店のことなのか
店主には今もわかりません。
でも どちらにせよ
店主にとっては
なにより嬉しい言葉でした。


おばあさんは 満足気に品を受け取ると
帰り際にこう言いました。
「もう一度 同じものを探してくれますか?
今度は贈り物にしたいから」。

店主が 名前と連絡先を聞こうとすると
おばあさんは にっこり笑って
「また来るから」
そう言い残して店を後にしたのです。 

店主は俄然はりきって、
すぐに同じ商品を見つけると
毎日おばあさんを待っていました。

ほどなくして おばあさんは再び
やってきました。
そして約束の品を受け取ると
本当に少しずつではありますが、
自分の話を店主に語ってくれるようになったのです。

おばあさんはとても不思議な方でした。

眼鏡の奥から見える目は
とてもやさしく 懐かしく 
店主は いつも  
まるで母親と話しているような
あたたかくて居心地のいい気持ちになるのでした。
反面、信じられないほど博識で、
適当にごまかしたり知ったかぶりをすると
すぐにばれてボロが出ることに店主は気づいておりました。

店主は だから、
知らないことは「知らない」と率直に伝え、
おばあさんは
「知らない」ことだらけの店主に
実にいろんなことを教えてくれました。


以前アメリカに住んでいたというおばあさん、
だからなのか、彼女が求める品は アメリカのものばかりでした。


「ウチはどちらかというとヨーロッパのものが多いのです。
お客さまの探している品なら 近くにもっと揃う店がありますよ」。

ある日 店主は 思いきっておばあさんにこう告げました。
おばあさんが大好きで
お会いするたびに心が躍り、
まるで母のように慕っていた店主にとって
それを告げることは 本当に断腸の想いでした。
でも。だからこそ よけいに。
おばあさんのコレクションのお手伝いができるのは
自分の店ではないのかも…と思うようになっていたのです。

するとおばあさんは にっこり笑ってこう言いました。
「ここで買いたいのよ」。


ある日 おばあさんは ご自身が育てた「桑の実」のジャムを
店主にプレゼントしてくださいました。

美しくラッピングされた瓶には
果樹の写真や
生産者(もちろんおばあさんです)の名前、
生産方法などを記した本格的なラベルが貼られていました。

木いちごとブルーベリーを足して2で割ったような
愛らしい形と ほどよく酸味が効いた上品な甘さ。
それはそれは贅沢でおいしいジャムでした。
いたく感動した店主はさっそくお店のパティシエに頼んで
そのジャムを使ったケーキをつくってもらいました。

小さなカップケーキが焼きあがった頃
偶然おばあさんが来られました。
絶妙なタイミングに 店主は思わず小躍りします。

焼きたてのケーキを差しあげると
おばあさんは 顔をくしゃくしゃにして喜んでくださいました。
女店主もおばあさん以上に幸せな気持ちになっていました。

cake

ワケもなく なぜか心が惹かれたり、
思わずラヴレターをしたためたくなる、
そんな素敵な方との出会いが、この小さな店にはたくさんあります。

今日も静かな街の小さな店で
女店主は待っています。
いつか あなたと会える日を。

| Posted by kica2001 | I think! | comments(3) | trackbacks(0) |




mii (2008/07/04 10:15 AM)
素敵な久々の店主のラヴレター・・
映画を見るかのように、読みふけっておりました

本当に素晴らしい出会いの場所・・

ここで買いたいの。。その気持ちもよ〜く分かります

また、ラヴレター3作目を心待ちにしています

TARA (2008/07/08 12:43 AM)
トレ・ビアァ〜ンですねぇ〜♪
心温まるお話でございます^0^
「ここで買いたいの」・・お店をしていたら
本当にたまらなぁ〜い一言ですよねっ!
そんなお店を作っているMさんもステキ、ですよ!
Mさんのまっすぐな気持ちが、おばぁ様の心に響いてのかもしれませんね☆
いつまでも、そんなMさんでいて下さいね^0^
・・・っと今日は綺麗にまとめてみました♪♪

kica manager (2008/07/08 8:28 PM)
miiさん*
ラヴレターを書きたい方は沢山いて
miiさんも もちろんその一人。
(恐れ多いかな…? 有名アーティストに対して!)

気合いが入るとよけい書けなくなる性分なので
ぼちぼちやらせていただきますね☆


TARAさん*
いやいや 私なんて…。
TARAさんのように もっと気持ちに余裕をもって
大きくと構えていなきゃって思うのに なかなか…。
そしてごめんなさい、連絡しなきゃ…と思いつつ
どうしても休みがとれない今日このごろ。
改めてメールします。
これからも呆れずおつきあいくださいませ☆










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