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廃墟へGO ☆


椅子

廃墟が好きだ。
子供の頃から。

主(あるじ)を失い所在なく佇む物鬱げな表情。
栄枯盛衰を知るが故の懐の深さと孤独の色濃さ。
人工物にして人を寄せ付けなくなるまでの物語。
止まったままの時間に対する興味と、懐古主義。
秘密基地への憧れと未知の世界に対する冒険心。
宝物か怪物か。潜む何かに対する期待と好奇心。

理由はいろいろあるけれど
すべて後づけ、理屈なんて
ホントは全く必要ないのだ。


幼い頃、空き家や廃校、工場跡を見つけると
なんとかして忍び込み、
各々の宝物を持ち寄ってみんなで秘密基地をつくった。

すぐに大人に見つかって
叱られ撤収するのがオチだったけど、
新しい物件を見つけると
凝りもせずその廃墟へと足を運んだ。




さて先日。
旅の途中で、
私は壮絶な廃墟に出会った。

それは、近年稀に見る大物だった。
ここまで見事な物件には、
そうそう出会えるものではない。

夢中でハンドルを切り、
いま来た道を引き返す。


外観ピンと空

外観/正面


敷地はざっと2000坪。
ボウリング場とパチンコ店、社員寮で構成された巨大な複合施設跡。

川口探検隊よろしく
さっそうとした足取りで
入口へ続く煉瓦の階段を昇る。

大きな階段は途中で二手に分かれていた。
まずは手前の方へ。

パチンコ入り口

パチンコ店の入口だ。まるで怪獣が大暴れしたような荒れ具合。
一体どうやったらここまでできるのかと首を傾げるぐらい、
すべてが荒れに荒れている。
2センチ余の厚いガラス壁は半分以上無惨に割られて粉々に散らばり、
無数のパチンコ玉とともに
まるで大量の氷雪のように床に厚く降り積もっていた。

パチンコ列パチンコ横外観


…う! これはちょっと…まずくない?
いくら廃墟好きとは言え、極度に恐がりの私。
心霊スポットと隣り合わせのこの状況はかなり苦手なのである。

「どうぞどうぞ、お先にどうぞ」
顔を引き攣らせながら先導役をパートナーに譲る。
彼は「またか」と言いたげな顔でさっさと中へ入っていった。
その背中にへばりつきながら、
「あっち行って」「あれ見たい」と指示を出す私は、
まさに川口浩隊長状態。

抜けた天井から剥き出しの骨組みと空が見え、
今にも崩れそうな危うさを漂わせている。

ギィー…ギィー…。
無数の穴からはクロスや錆びた鉄骨がぶら下がり、
風にゆらゆら揺れながら怪しい音をたてていた。
整然と並んだパチンコ台はところどころ引き抜かれて床に崩れ、
ガラス片に埋もれてる。

パチンコ/カウンター


もしも。今これらが突如点灯して
電子音を響かせようもんなら腰を抜かすこと必至。
あぁでも、ファンタジー映画か、サバイバルホラー映画のプロローグみたいで
意外と楽しいかもしれない。うん。私ならここをロケ場所に使うなあ。
あれこれ妄想しながら歩を進める。

昔は華やかだったのだろうカウンターのまわりには、
プロボウラーによるサイン色紙や漫画雑誌、
コインの包装紙らしきものが束になって散らばっている。
建物が放置されて12年余りの月日が経つことを
置き去られたカレンダーが物語っていた。

さんざん度肝を抜かれたけれど、こんなものは序の口だった。
予想をさらに上回る手に汗握る空間が
この廃墟にはまだまだ隠されていたのだった。


パチンコ店の脇に面したドアの向こう、
そこには信じられないほど広大な暗闇が広がっていた。

体育館のように広く、映画館のように暗いそこには
レーンはもちろん床板すら残されてはいなかった。
水たまりいっぱいの土の地面の上には
無数の細かいゴミが散らばっていた。

まさに映画のセットそのものだ。
落書きだらけの壁に四方を囲まれたそこは
悪役達のアジトで、主人公と悪役のドンが
最後の決着をつける、お決まりシーンが目に浮かぶ。
暗くてよく見えないけれど、
何かの死体が転がっていても決して不思議ではない。

ボウリング場/広大な闇
ボウリング場/広大な闇3ボウリング場/闇ななめ
ボウリング場/広大な闇2外観/横壁/大穴
外壁/穴だらけけむし



なかなか前に進めない私の背後で
「ヂョワッ…ヂョワッ…」
パートナーが「バイオハザード」のゾンビの音を真似る。

「やめなさい!」
思わず大人げなく叫ぶ。
天井の穴から血を滴らせた巨大ゾンビが今にも襲ってきそうな気配。
この空間なら何が登場してもまったく違和感がないのだ。

こわい、正直こわすぎる。

翌朝の新聞に
「神戸市の夫婦、旅行に出たまま行方不明」
こんな文字が踊るなんてシャレにならない。

必死に目を凝らしながら
向こう側の出口へ。
大量に置き捨てられたパチンコ台を脇目に通り過ぎると
すっかり自然に支配され無惨な姿の軽自動車。

パチンコ大量クルマ

奥の社員寮をおそるおそる覗く。
ロッカールーム、洗面室、トイレ、二間つづきの和室…。
ある時突然、立ち去らねばならなかった何かの事情が
ここにはあったのだろうか。
思いきって中へ。

寮/部屋寮/廊下
裏倉庫闇から外

長い廊下に隣接した部屋をひとつひとつ覗いた後、
いちばん暗い突き当たりのドアを開けてみた。
再び、あの広大な暗闇映画セット空間。

ありし日の賑やかな姿をあれこ想像しながら
再びエントランスへ戻り、今度はもう一方の階段を昇る。

ボウリング場/エントランス入口


そこは、ボウリング場のエントランスで
ガラス壁に面した明るい開放的な空間だった。

ロッカー
椅子うしろボウリング場/エントランス/奥から
並んだボウルボウリング場/エントランス/パチンコ台
ボウリング場/エントランス/ガラス壁

たくさんのボールやシューズ、バッグ、優勝カップなどが
ロッカーの前に散らばっている。
そしてここにもパチンコ台…。




階下へ投げ落とされたのか、
赤と黒の回転椅子は土の上に転がるものもあれば、
ガラス壁の割れ目に不安定に引っかかったままのものもある。

非常口

非常灯は天井から半分ちぎれかけ、
風がふくたびにギーギーと音を立てて揺れていた。

小一時間ほど探検を堪能し、
私達はその建物を後にした。


地面の上のボウル


次に訪れるとき、
誰かの手によって
新しい命を吹き込まれ、
鮮やかに甦っているといいな。

人間がつくりだした、人間のための空間が、
人間に捨てられ、いつか忘れ去られていく。

時間に置き去りにされた空間を訪れる人間は実にさまざまで、
そこを敬う者あれば蔑む者もあり。
でもその空間はただ寡黙に、
時が過ぎていくのを待っている。
いつしか人間を寄せ付けない程の強烈な存在感を身に纏いつつ。

ここで何が起こったか。
その過程を想像すると、時間がたつのも忘れてしまう。
冒頭にも書いたけれど、
止まったままの時間に対するノスタルジアはもちろん、
自分が主(あるじ)になれるかも…そんな可能性への期待もあるのだろう。


割れたボウル


田舎には田舎の、都会には都会の
古きよき建物は今も沢山残ってる。
たとえ廃墟と化しても
いつか新しい主を得て息を吹き返し、
鮮やかに甦ると私は信じる。

ボウリングピン


アルプスの少女ハイジが
冬のあいだ山をおりて
おじいさんと暮らした街の家も元廃墟だった。
街の人の協力でそこに住める状態まで整える、その過程が楽しくて
子供の私は画面に釘付けになっていた。
さまざまなところに階段や扉があるその複雑な家に
今も本気で憧れている。

廃墟が好きだ。
その時代の英知を尽くして創られた高い造形美を
今の時代に再現するのはとても困難だからである。
できればいつか廃墟を手に入れ、
自分で手を加えて住んでみたいと思っている。

もちろん条件がある。
今回掲載した写真の中に
望まざる何かが写ってなければ…
の話だ。


| Posted by kica2001 | favorite | comments(4) | trackbacks(0) |




マコ (2009/02/11 12:01 AM)
わぁー、なつかしい〜。
ここのボーリング場に子供の頃、家族で来ていました。
20年くらい前でしょうか。
あの頃はキラキラして活気にあふれて、あの入り口までの坂道を上がって行くときのワクワク感と言ったらたまりませんでした。

現実はこのような廃墟が地元では所々に目につきます。
時代の流れというのでしょうか。。

それにしても、
ここを探検してみようという勇気にただただ驚きです!!すごいっ。

バディ (2009/02/11 12:40 AM)

おれ満太郎(*^_^*)

すげ〜〜〜〜(+o+)
ようこんな廃墟に潜入したなあ!!
おれも去年だったか旅行先で見た花火大会は
廃墟から見たで!!
また詳しく教えたるわ(*^^)v
明るいうちから周りは探検したけど、
点ちゃんたちは怖くて中には入らずじまい。
おれは廃墟より花火が怖かったわ(^^ゞ

kica manager (2009/02/11 11:06 AM)
*マコさん*
えーっっ! ホ、ホントですか?
京都府北部地方のご出身?
まさか、この建物が元気だった時代を知る方に
出会えるなんて…。私も驚きです!
少々ショッキングな画像の数々、
失礼いたしました。
子供の頃の素敵な思い出は色褪せることなく、
ずっと心の中で輝き続けますように。
おすすめの廃墟情報等ございましたら
ぜひ提供してくださいね(心霊スポットはNGですが)。




kica manager (2009/02/11 11:12 AM)
*バディさん*

廃墟で見る花火大会、風情たっぷり、納涼にぴったりですね。
ぜひ、詳しい情報教えてください♪
岡本にも素敵な廃墟があるのですが、
さすがに勝手に潜入という訳にはいかず…。
またいろいろ探検してみます。













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